物に現れる心の世界

江戸川区に住む石川カネさんという方が体験されたお話。
石川カネさんは農家に生まれて、農家に嫁いだ方です。
自分が「百姓女」であることに極端な不満と卑下する心を持っていました。
そのカネさんが一度新しい倫理の話を聴く機会を得て、天職というものがどのように尊いか、働くということこそ人間が生きることなのだと悟り、生まれ変わったような感激に浸りました。
これは創始者である丸山敏雄先生がご存命中の話で、今から79年ほど前の話です。

7人の子の母として子供らは順調に育ち、わりあい平和な家庭を営んできたカネさんは、他に何の不足も無いのですが、ただ百姓仕事は容易な事ではないと不足心だけは30年この方心から取り去ることができずに苦しんでいました。
肩こりがひどく、30年ずっと苦しみ、毎晩子供たちが母親の肩をたたくのが日課だったそうです

ところが昨年、といっても昭和26年5月の話。
岡部さんという方の勧めで、市川市の「朝の集い」に参加して初めて聴いた「新しい倫理」の話の素晴らしさに深く心を打たれました。
その日から毎朝小岩から電車に乗って市川へ通うようになりました。
今日まで百姓仕事は嫌だと思っていましたが、これはとんでもない間違いだった、人様の命の糧を作る、世にも尊い仕事であると話を聴いてはっきりとわかってきました。
すると、その日から何十年と長い年月、持病のように持ち続けた肩こりが拭い去ったようにすっかりなくなってしまいました。
これが体に表れた「倫理体験」でした。

そればかりか、いつも頑固なお父さん、私ばかり気を使って、愛情も何もあったもんじゃない、と思っていたご主人の良いところが見えるようになり、尊敬の念が湧いてきた。
すると、家業である農業の成績も大変良くなり、その年の稲作は35年ぶりの大豊作。
雀にさんざん荒らされて、刈り取る時には田の面が籾殻で埋まるほどだったのが、不思議な事に、雀の害が無くなってしまった。
土手の上から見下ろすと、広い田圃に雀がたくさん飛んでいるのに、カネさんの田には一羽もいない。

実は、この体験を発表するにあたり、倫理研究所市川支部の人たちが実地見聞に来ました。
石川さんの田圃に行って半日現場を視察したところ、まったく報告どおり、一羽の雀もカネさんの田圃におりないことを確かめました。
人の誠というものは、単なる一種の精神状態というものではなく、天地の生命に響いて、その働きを目の当たりに見せるものなのです。

齋藤講師は昭和41年、倫理研究所の富士高原研修所が出来た時、そこに「一茎二穂」の稲がかざってありました。一本の茎から二本の穂が出ているというもの。
これは、その石川カネさんが丸山先生に稲の取れ高が悪いということを言ったところ、
「稲もあなたのお子さんと一緒、朝晩田圃に行って”今日も一日頑張ってね”、夕方は”一日ご苦労さん、ゆっくり休んでね”と一本一本の稲に声をかけて田圃をぐるっと一回りしなさい。」
と言われた。
カネさんはこれを言われた通りに実践しました。
そうしたところ、一本の茎から二本の穂が出た、それが研修所に飾ってあったそうです。
そのぐらい、私たちの心は物に反映されるのです。

先延ばしと即行

倫理とは実践しないと意味が無いのですが、なぜ実践できないのでしょうか?
その前に大きな壁が立ちはだかっているからです。
それは私たちが日常生活の中でどっぷりと浸かっている「先延ばし」です。
「先延ばし症候群(PCN症候群)」とは近年世界的に流行っている一種の病気です。

倫理研究所の特色は「苦難は幸福の門」だと捉えるところですが、その上で欠かせないのが「即行」という実践です。

実はこの「即行」ということについて心理学をとおして研究した人がいます。
つまり心理学を通して倫理の実践の正しさを証明しようとするものであり、世界的な病の一つである「先延ばし」を倫理で解決しようと研究を続けています。

アメリカとカナダの心理学者が発表した『先延ばし行動と現実』というレポートの要約を見てみましょう。

  1. 20%の人が自分のことを先延ばしだと認識している
  2. 先延ばしすることに慣れてしまっている、先送りすることを重大な問題と捉えるべきである
  3. 先送りする癖は時間管理の問題ではない、他の人々に比べて見積が楽観過ぎるのだ
  4. 先送りする人は家庭環境から先送りすることを学んでしまっている。親から出ている支配に対して反対行動が出てくる。
  5. アルコールが多い人ほど先延ばしにする傾向がある
  6. 先延ばしする人は自分に嘘をつく
  7. 注意が散漫になりがち
  8. 何もしないことにスリルを感じる
  9. 大慌てですることの幸福感、終わってからの満足感
  10. 最後に先延ばしにする人でも行動を変えることができる

常習的な先延ばし行動は、社会的信用などに悪影響を与え、離婚や失業など一連の問題を引き起こし、健康面に引き起こす影響もあると言われています。
この先延ばしをしないためにも倫理の「即行」の実践が有効だと、その研究員は説いています。

先延ばし行動の現状、現在行われている解決法などを検討しながら丸山敏雄先生が提唱した「純情直行(素直にすぐやる)」という実践原則の有効性を再認識すると同時に、ライフスタイルの改善を通して「即行」を可能にする方策を考える、というのが中国の特任研究員である龔穎(キョ エイ)さん。

先延ばしには「チームワークを乱す」というコストもついてきます。
チーム内でスグやる人とやらない人がいると足を引っ張られてチームワークが乱れてしまいます。
私的な関係も破壊されます。

これら現在心理学において研究されていることが以前から倫理の中で丸山敏雄先生が提唱している倫理にあるわけですから、よくよく理解をして、周りに伝えていくべきでしょう。

【テーマ】物に現れる心の世界
【講師】一般社団法人倫理研究所 法人局 法人アドバイザー
    齋藤 隆己 氏

 

文責:副専任幹事 寺内不二郎