1 ACEを初めたきっかけ(自己紹介)

国連で働くことを夢見てアメリカに留学しようと思っていたが、なぜか大阪の学校に進学してしまった。アメリカに数カ月滞在した折、アメリカを3/4回った。その時知り合った人たちとメキシコに行った。そこで、小さい姉妹が『お金頂戴』といって手を差し出した。その少し離れた所では母親がこちらの様子を見ていた。なぜだろう?なぜこんなことになっているのだろう?その疑問が児童労働へと私を導いた。

学校も行けずに働く子どもたちが世界にはたくさんいることを知った。勉強する機会すらない子どもたちが沢山いるのは、不合理で納得できないと思った。それで国連職員を目指すことにして、なんどか手前まで行ったが、結局国連職員にはなれなかった。

大阪のNGOでボランティアをしていた時「児童労働に反対するグローバルマーチ」という世界的なムーブメントがあることを知って、日本でもやる団体があるかどうか探したがなかったため、諦めきれなかった私は、このマーチのためだけに団体を立ち会えようと、趣意書をまとめて、ある人に見せた。「いいんじゃない?」といわれて、そうか、やってみようと、友達に声をかけた。それがACEのはじまり。最初は6カ月限定のNGOとして、グローバルマーチを日本で実施して解散するはずだったが、今に至っている。

2 カイラシュさんとクマル君

グローバルマーチはインドのカイラシュさんが提唱した活動、日本では大阪と東京でマーチを実現した。カイラシュさんは2014年にノーベル平和賞を受賞、そこで一挙に有名になり、ACEの電話もパンクした。電話が鳴り止まない状態だった。

カイラシュさんはインドで8万人以上の子供たちを救出してきた。
その一人のサディス・クマル君の「夢の話」は今でも鮮烈だ。

彼は糸を作る工場で働き、6日働いても5日分の給料しかもらえず、何かあると煙草の火を押し付けられたり、食事の皿を投げつけられることもあった。そういうことを親に相談しなかったの?と聞いたら、しなかったという。なぜ?ときいたら、一緒に働いていた仲間の子どもが親に相談し、親が文句を言ってきたことがある、でもその子は、それ以後行方不明になり、きっと殺されたのだと思う。そんな例があるから、親にはとても相談できないと思った、という。

あなたの夢は?ときいたら、「なるものにしかならない。来るもの拒まずだよ」といわれた。小さい少年が、将来の夢も希望も持てないことに衝撃を受けた。

3 国連の活動と連携

国連は「持続可能な開発目標」を掲げた。それは、貧困、環境など大きな問題に対し期限を決めて取り組むべきだという考えからである。世界の元首が集まってそのようにはじめて決めたのは2000年だったが、その目標期限2015年になり、新しい目標をかかげることになった。それが持続可能な開発目標である。

①誰も取り残さない
②経済、社会、環境の3つを考える
③パートナーシップ=民間の活用

こうしたことをその考え方の柱にしている。
そして、17の目標、169のターゲットの中のひとつとして、「2025年までに児童労働をなくす」ということを目標の中にに掲げた。このことはACEにとっても追い風になった。
その目標自体は朗報で、周りにも「国連の目標」と活動を呼びかけやすくなる。

しかし、本当に「今いる1億6800万人の児童労働者をなくすことができるのか?」
大きな課題が持ち上がった。
私達に出来ることの一つは「児童労働によるものを買わない」ということ。

まずどんな風に作られているかチェックシステムが必要、サプライチェーンのチェック機能で、児童労働の工程がないことをチェックする仕組みになれば、取り組みは大きく前進する。それは国際ルールとなり日本にも波及してきている。

4 児童労働の実態

児童労働とは、違法な労働をさす。
健やかに育つ阻害要因になったり、健康を害したり、義務教育を受けられなかったりということが「有害な労働」とみなされる。
そして、児童労働は世代間連鎖しやすい。そういう人が大人になると、結局また子どもを働かせることになりやすい。

児童労働が多い国を見ると、アジアやアフリカが8割。
分野では農業が多い。
何故児童労働が起きるのかを考えると、「需要と供給が一致している」ことがあげられる。だからなくならないのだ。

「現地を変えること」はすなわち「日本(や欧米)の消費行動を変えること」にほかならず、それは私たちの暮らし方そのものだ。
現地と自分たちの暮らし方、この二つの変革をやって行かなくてはならない。
児童労働の無いエコシステムが機能すること、そのために市民参加の寄付やなにかが、そのまわる仕組みに組み込まれていることが重要ではないか。

5 私たちの目指していること

ACEは世界の子どもの権利が守られ、安心して希望をもって暮らせる社会実現のために、児童労働を市民と共に撤廃・予防する国際協力NGOです。

①子どもの利益を守る
②市民の力を信じる
③ネットワーク(他団体との協力)
④フェアで自立した組織
⑤成長できる場であり続ける。

自分が関わったNGOの経験から、誰かが無理をしないと続かない組織は嫌だと考えた。スタッフも、ボランティアでも、ここに来ると学びがあり成長がある、という場にしたいという願いが「成長できる場でありつづける」という価値観に込められている

6 私たちの事業内容

ACEのビジョン・ミッション実現のために実施している事業は以下の4つ。

①子ども支援
②アドボカシー
③啓発、市民参加
④ソーシャルビジネス推進

7 コットンと農業(インドの例)

インドは48万人がコットンに従事し、そのうち20万人が14歳未満と言われる。これは総労働の25%。

インドは遺伝子組換えコットンを導入したため、手で受粉させる作業が必要なので、短期の安い労働力が求められる。そこで女の子が労働力として必要になる。と言うのはインドではまだまだ女性は教育を受けさせなくていいという考えが強く、またお嫁に行くために持参金が必要なので、働いてお金をためたいと考える女の子も多い。

しかし農薬がカラダにもたらす被害は無視できるものではなく、畑から子どもたちを引き離したい、と家庭訪問を続けている。

ACEはそうした問題が顕著なインドのテランガナ州で「ピース・インド」プロジェクトを運営している。このプロジェクトはその地域で4-5年かけて児童労働がなくなることをめざし、村単位でコミュニティーレベルでの変化をもたらすことを促している。

ブリッジスクールでは、勉強についていけない子どもたちをフォローし、また給食も出しているので、学校に通わせるインセンティブになる。女の子は別の初等教育、職業訓練を施す試みも実施。授業料はあとで少しづつ返す仕組みを作っている。

インドのローカルのNGOと連携し、プロジェクトを立ち上げて取り組んでいる。スケジュールや資金調達についても合意している。こうした地域のNGOとの連携という新しい流れも徐々に出来つつある。

マヘシャリちゃんという女の子がいる。4年をかけて村の中で彼女に学校に行くようにさせていった。また、オーガニックコットンの栽培を促進するプロジェクトを連携している企業がACEが支援したプロジェクトでスタートさせ、ビジネスとして成り立つようにしていっている。PTAや住民組織ができつつあり、児童労働を止めさせていくことが、村の再生や新しい経済をつくることにつながっていっている。

8 企業連携とアドボカシー活動ガーナでも児童労働を撤廃するための「スマイル・ガーナ」プロジェクトを運営している。

日本では、この地域でとれたカカオを使って森永製菓がチョコレートを作り販売している。2015年には国際フェアトレード認証も取得している。

ネットワークを通じたアドボカシー活動(世論関係、政府への働きかけ)も行っている。近年はレッドカードキャンペーンという形で、レッドカードを掲げて写真をとってもらうキャンペーンを展開。。

 

9 経営者として大切にしていること

①願う力⇒戦略に通じる
②素直さ⇒わからないことは知っている人に聞く、教えを請う
③楽観主義、強運⇒うまくいかない時、うまくいかないことを嘆くのではなく、どうしたらうまくいくかを考える

マインドフルネス(自分の体や気持ちに気づく)ということが最近注目されている。がんばりすぎてガクッと来ないように、自分の心の持ちように注意を払うことが重要ということから、今この瞬間にフォーカスし、整える、という考え方。
自分のマインドが小さくなると実行力も小さくなる。経営者の器の大きさにしか会社は大きくならないと言われ、大きな夢を語るほうが人はついて来やすいのだと思うようになった。

「自分をいい状態にキープすること」が大切。

10 カイラシュさんの言葉

カイラシュさんが2016年5月に来日し、彼の来日も含め昨年度は100件以上のメディアにACEの関連情報が掲載された。児童労働を知ってもらうかけがえのない機会となった。

カイラシュさんの3つの言葉

1 DREAM
2 DISCOVER
3 DO

大きな夢を描き、自分の強みと機会を活かし、今、アクションをとること。
それが大事だと思う。

【講師プロフィール】

1974年東京生まれ。
桐朋女子高校卒業。上智大学文学部卒業。
大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)博士前期課程修了。
大学院在籍中の1997年にACEを起業し、代表に就任。
会社員、国連機関スタッフ、通訳などの職と平行しボランティアで活動を続け、2007年からACEの活動に専念。2012年・2015年に出産、二児の母として、子育てと仕事に励む。
目指しているのは「人とつながり、力を引き出し、社会を変えるエネルギーを生み出す」こと。

 

 

文責:ミックブレインセンター
福田恵美