本日のテーマは「合縁奇縁」。
これは「夫婦や友人関係など、人と人との巡り合わせというものは不思議な因縁によるものであるということ」、合縁は「互いに気心が合う」奇縁は「不思議な縁」と辞書には書かれています。
本日の講師は倫理研究所 法人局の丸本敏文 首都圏方面副方面長は研究員として各単会を回られ会員の指導をされています。色々な経営者の方に会って来られたわけですが、その中でも印象深いのはやはり倫理との出会い、その「合縁奇縁」のエピソードです。

10年以上前、丸本さんがまだ法人局ではなく「家庭倫理の会」という個人の会を担当されていた頃に、ある会を訪れました。当時その会の会長さんは72歳の男性で、会歴が40数年というベテランの方でした。それだけに丸本さんはその会長さんの入会のきっかけが知りたいと思い、食事の席で尋ねてみました。

その会長さんはゴルフが好きで、ゴルフの予定だったある日の朝、楽しみが過ぎて3時過ぎに目が覚めてしまった。一度目が覚めるとゴルフのことで頭がいっぱいになってもう眠れなくなって、気がつくと4時を回っていました。すると隣で寝ていた奥さんが起き出し出かける準備を始めました。何やら少し前から朝4時に起きてはどこかに出かけるようになっていました。不思議に思って尋ねてみると、近所の方に誘われて早朝の勉強会に通うようになったということでした。それが家庭倫理の会で当時は「朝の集い」と言われるものでした。その日はちょうど朝早くに目が覚めてしまったので、奥さんと一緒に「朝の集い」に行ってみることにしました。

そこで17か条斉唱、輪読、そして講話を聴きましたが、それほど興味を持つまでにはなりませんでした。講話が終わると残れる人だけでお茶とお菓子で座談会になりました。するとその会の役員の方が「ご主人、講話をしてくれた先生に何でも相談ができますよ」と言われ、特に相談事も無かったのですが、場の雰囲気から何か話したほういいだろうと考えて、会社の話をしました。

その方は会社を経営されているわけですが、その社員さんのうちの一人が少々問題があるという話でした。具体的には協調性に欠け、例えば会議などで意見が一つの方向にまとまりつつあるという段階になって反対意見をして混乱させてしまうといったことでした。
話を聴いたその講師の先生は「あなたは我儘な人ですね」というのです。さらに「ご主人、その社員の方にお詫びをしてください」とまで言われ、人に話をさせておいて一つも聴いていないと腹が立ちましたが、黙って聴いていると「お詫びの仕方を教えます。面と向かってお詫びしなくて大丈夫。毎朝目が覚めたらその社員さんの家の方角を向いてお詫びしてください」「○○さん、おはようございます。今まで申し訳ございませんでした。今日も一日よろしくお願いします」それだけ言うと先生は強制的に指導を終わらせてしまいました。
釈然としないまま会場を後にしましたが、その日はゴルフで一日汗を流して家路につきました。

翌朝目が覚めた時に、昨日の朝のことを思い出し変なことを言われたと思いつつも、言われっぱなしで何もしないのも癪に障るので、ここは一つ騙されたと思って言われた通りにやってみることにしました。「○○君おはよう。今まで申し訳なかったね、今日も一日よろしく頼むね」
それから毎朝目が覚めたら社員さんへのお詫びをすることを続け、ちょうど2週間が過ぎたある日のこと。いつものように目が覚めて洗面を済ましてから「○○君おはよう。今まで申し訳なかったね、今日も一日よろしく頼むね」とお詫びをしました。するとなぜかその日に限ってその彼の笑顔が頭に浮かんだ。考えてみれば彼の笑顔をあまり見たことがないな、と思いながらも普段どおり出勤しました。

その方はいつも社員さんよりも早く出勤して会社の清掃をするのが日課でした。ところがその日は会社につくとすでに電気がついていて誰か出勤している。「おはようございます!」ドアを開けるといつもお詫びしているあの彼が、朝頭に浮かんだその笑顔で元気に挨拶をしてくれた。訳を聞くと、いつもより早くに目が覚めたので会社に行って、いつも社長が掃除をされているのを知っていたので今日は自分の仕事と考えて掃除をしていたという。その日はその彼と一緒に掃除をすることにしてこれまでよく知らなかった彼のことを色々と聴く機会となりました。そこで彼の仕事に対する思いを知ることとなり、普段の彼の取組姿勢を理解することができました。
その後その社員さんは勤務姿勢が変わり、結果的にはその社長さんの右腕になるまでに成長し、定年まで勤め上げられたそうです。
その一件がきっかけとなり、その後熱心に倫理を学びと同時に普及に力を入れられ、法人会の会長までされるに至ったそうです。

遺伝子研究の第一人者である筑波大学名誉教授の村上和雄先生が「出会い」について述べられていることを丸本さんが教えてくれました。
「良い出会いは、眠っている良い遺伝子のスイッチをオンにしてくれる」
自分が憧れている人や尊敬している人に出会うと少なからず刺激を受けますが、村上先生がいう「良い出会い」とはそれだけでなくこちらの「心の持ち方」が出会いに影響すると言います。「今日一日の出会いが自分の将来にとって何らかのプラスをもたらしてくれる」と考えて人と出会うと本当の意味での出会いとなり、眠っている遺伝子のスイッチをオンにしてくれるというわけです。
何も考えずに出会うのではなく、こちらの「心の持ち方」によって出会いは「良い出会い」になるということでした。

さらに丸本さんはもう一人の出会いについてのエピソードを教えてくださいましたが、いずれもその出会いがその後の人生に大きく影響を与えるものになったのは、村上先生が言われている通り「どのような心で接したか」ということ、つまり「誰に会ったか」だけでなく「どんな(状態の)自分が出会ったか」ということでした。さらに、その出会いがその後の人生に大きな関わりをもつものであるのが「縁」であるわけですから、縁も自分の心の持ち方によって「合縁」や「奇縁」となる。「万人幸福の栞」の第3条「運命自招」にある通り出会いや機会も自分の心が決めているのですから、何事においても「ふんわりとやわらかで、何のこだわりも不足もなく、澄みきった張りきった心を持ち続けること」が大切であることを改めて学びました。

丸本敏文講師、ありがとうございました。

文責:事務長 寺内不二郎