違法に伐採された木材が大量に日本へ

本日の講師はフェアウッドおよび国産材による家具の製造販売を手がける株式会社ワイス・ワイスの代表取締役 佐藤岳利さん。
フェアウッドとは何か、なぜ国産材にこだわっているのかについてお話をして頂きました。

冒頭、朝日新聞に掲載されたマレーシアはボルネオ島における熱帯林の伐採、それによる砂漠化に警鐘を鳴らすを記事を紹介されました。東南アジアにおける森林伐採の多くは「パーム油」のためのパームヤシを育てる畑にするために原生林が伐採されています。ボルネオ島の原生林は今や全体の5分の1しか残っていません。さらに、その伐採された木材の大半が日本に輸出されているという現実があります。森林伐採による自然破壊によって生態系が破壊され、多くの動物が絶滅の危機にさらされており、先住民族も迫害を受けて問題となっています。そのような違法な取り組みによって得た原材料をたくさん日本が輸入しています。

現在建設が進んでいる新国立競技場で使用されている木材の大半がこの地域で違法に伐採された木材が使用されていることもわかっています。国は合法的な取引によって木材を調達していることを公表していますが、その裏には「現地で加工されたものであれば合法」というロンダリングされたもの。国が国家事業においてそのような姿勢で取り組むのですから、民間企業の意識が及ばないのは当然のことと言えます。同時に、欧米や豪州においてはそういった違法木材の輸入に関して厳しく取り締まっていますが、日本は加工されたものに対しては許可されるという極めて緩い取り締まりになっているため、どんどん日本に送られるようになってしまっています。

国産材で100年使える家具をつくる

一方でこのことが日本の木材の価格を下げてしまい、30年前と比較して現在は10分の一にまで下がっています。日本の林業をはじめとする木材産業は赤字で、補助金が入らなければ商売が成り立たないといった事態に陥っています。これによって日本国内の自然森林も人の手が加わることとなり、各地の山々で災害や獣害、花粉症といった健康被害まで引き起こしています。
これらの問題の根本は私たちの「安いもの」「ファストなもの」を何も考えずに求めすぎる生活スタイル、歪んだ価値観にあると言えます。佐藤さんは10年以上前に価格の下落による経営危機に陥った時にそのことに気づき、改善する決意をされました。それまでは、中国から安く輸入していましたが、現地での違法木材だけでなく違法労働や日本の建築基準法で許されていない劇物由来の原材料の使用など違法だらけの商売ではなく、「フェアトレード(法を遵守した適正な取引)」によるフェアウッド、そして国産材と日本の職人による「100年使える」家具作りにシフトしました。

ワイス・ワイスさんは、違法な伐採などによって森を破壊してつくられた家具に対して「森をつくる家具」を目指しています。その方向性は商品案内の中で語られています。
『「自然と人、人と人、都市と地方」の関係性に配慮した経済や社会の仕組みを構築する。【地域材】を活かす家具と空間づくりで、本当に豊なくらしをお届けしたい。』
以前は販売している大半の家具が違法な取引きの疑いのある外材で作られていましたが、それらをすべて国産材に切り替え、さらにそれらの産地や製材所、木工所がキチンとわかる「トレーサビリティ」に取り組んでいます。

地域材が心を豊にし人を引きつける

そのような志ある仕事をしてきた中で起こった「東日本大震災」。佐藤さんは被災地の宮城県を訪れ、復興のためにやれることはないかと考え地域の山を見て回ったところ、古い製材所にたどり着きました。昭和からの古い製材所でハイテクな機材は一つも見当たりません。その上、前述の通り現在は全く儲からない仕事。しかし、その製材所は昔ながらの仕事ぶりで、自然をそのまま活かしたオーガニックな原料・方法で仕事をしてきたところでした。地震によって被災したこの製材所を見た佐藤さんは、復興には地域の活性化、雇用の創出が不可欠であると考え、この宮城の栗駒山で産出される杉でつくる家具をこの産地で製造・販売することにしました。
原材料以外何もないところから始めるわけですから大変なことでしたが、2年かけてこの「栗駒山のスギでつくる家具」を完成させることができ、これが大ヒットしたそうです。今では元々製材所で働いていた5名ほどの方に加えて地域の方20名ほどに働いてもらっています。

その後このワイス・ワイスさんの取り組みを聞きつけた会社さんからもオファーが来ました。アウトドアウエアの「パタゴニア」という会社の日本支社から、横浜にあるお店の内装及び家具を地元小田原産(足柄山)のケヤキを使いたいという申し出でした。パタゴニアという会社ではアメリカの本社から家具等を輸入して使うということになっていたのですが、日本支社のスタッフがウッドマイレージ(使用する木材輸送時の環境負荷)を考えて日本で調達した方が良いということを本社に働きかけ、晴れて今回実現しました。今ではパタゴニアの日本のお店ではワイス・ワイスさんが調達・製造したものが展開されています。
それ以外にも各地域の企業から同様の地域材を使ったオフィスや施設の家具のオファーがあり、国産材の使用だけでなく企業と地域の新たなコミュニケーションがワイス・ワイスさんを通じて生まれています。また、それらの企業は業績も良く、その要因がやはり国産の地域材をしていることにあると佐藤さんは言います。そこで働く人たちが地域の貴重な木材で作られた家具の中で仕事ができる喜びを感じたり、来客に対して自慢気に紹介をし、そこで新たなコミュニケーションが生まれているからだということでした。

最後に佐藤さんは、そうは言っても中国産の3倍もする家具を買おうという人はまだまだ少なく、取り組みに賛同はしてくれても現実の商売は難しいと言います。でも、高いという人に対しても「せめて椅子1脚でも」購入することを勧め、商品としての良さを地道に伝えていっているそうです。
日本の林業を背負って、業績が良くなる、コミュニケーションの輪が広がる家具としてこれからも取り組んでいかれます。

テーマ 「国産木材による ソーシャルビジネス〜エシカルファーニチャー市場を日本につくる〜」
講 師 株式会社ワイス・ワイス 代表取締役 佐藤 岳利氏

 

文責:事務長 寺内不二郎