倫理を学んでも良くならなかった理由

ご主人の父親が学校をやっていたことから、夫婦でその学校を運営することになり、義父が亡くなられてからは校長を務めることになった渋谷通江講師。
ただ、引き継いだのが工業系の学校で、少子化に加えて工業科の不人気もあって生徒数は年々減少傾向にありました。

倫理に出会う前は、我儘で責め心で一杯だった渋谷講師は、焦るあまりご主人や他の先生にばかり当たっていました。怒りは連鎖して、学校内は互いに責めあう空気に包まれていました。
そんな時、長く家庭倫理の会で学んでいた職員さんの一人から「経営者が学ぶ会があるから行きませんか」と誘われたのが倫理法人会に入るきっかけでした。

最初に「万人幸福の栞」を読んだ時、至極当たり前のことが書かれていることに驚き、これを学べば立派な経営者になれると考え、それ以来ほとんど休まずにモーニングセミナーに通うことになりました。
ところが倫理を学び出しても夫婦間の仲は悪化する一方で、結局ご主人は学校を辞めることになってしまいました。でも、当時の渋谷講師はご主人が辞めてくれて良かった、これからは伸び伸びやれると考えていました。
ご主人がいなくなって伸び伸びやれると考えていた渋谷講師ですが、生徒数は相変わらず減少傾向が続きどうしようもありませんでした。 そんな時に千葉県にある現在の学校法人が東京の分校として買い取ることを提案してきたことで、ご主人に相談の上でそれを受け入れることにしました。

ちょうどその頃に倫理法人会においても会長という役を引き受けることになりました。新しい学校と新しく就いた会長という役で正に「てんてこ舞い」の忙しさになった渋谷講師でしたが、これが実践だ、自分は倫理を学び実践しているから大丈夫、実践しているから仕事も単会の普及もうまくいくと考えていました。
倫理指導も受け、お墓参りやご主人の言うことを聴くなどの具体的な実践項目を与えられ実践しました。ところが、仕事も普及も上手くいかない。 思い返せば、倫理の普及活動をしている時には仕事のことを考え、仕事の時は普及のことを考えるなど、実践はしていても「心ここに在らず」の状態でした。
さらに「倫理を学んでいるから」あるいは「この実践をしたから良い結果がでるはず」というどこか利己的な考えで取り組んでいたと渋谷講師は言います。

曇りっぱなしだった心が晴れて

学校の生徒数は相変わらず増えませんでした。さらに家庭では単会の会長という役柄、特に土日に色々な行事のために出かけることもあり、家事が後回しになってしまってご主人から指摘される。その度に返す言葉は「しょうがないじゃない」、決して謝ることはありませんでした。

実践するにあたって渋谷講師は「まず明朗になろう」と考えて取り組み出したのですが、そう考えた先から仕事のことや普及のことが頭をよぎり、結局はいつも「曇りっぱなし」だったと言います。
会長を3年務め、現在の黒澤会長に交代した時、正直ホッとしたと渋谷講師は言います。それと同時に、これまではどこか「会長として」義務的に行っていたモーニングセミナーが楽しみになった、楽しくてしょうがないほどになりました。仲間と挨拶すること、参加者のために朝食会の準備をするのも楽しい。 また、普段の朝起きもこれまでよりもかなり早く目が覚めてサッと起きられるようになりました。

普段から朝が早いので、学校にも一番に行くようになり、まだ誰もいないところで掃除をしたり職員さんのためにコーヒーを淹れておくようにもなりました。
すると、明朗な心と「皆んなのため」に喜んで働き始めた渋谷さんの周りが変化し始めました。
これまで減ることはあっても増えることがなかった生徒数がいきなり定員一杯になり、次の年からは定員をオーバーする受験者数になったのです。これまでは不合格者を出すことがなかったので、不合格になった生徒さんの学校には丁寧にお詫びと別の学校を紹介して回りました。すると、その翌年にはさらに多くの受験者が来るようになりました。
さらに、これまでは入学しても必ず退学者が出て、結果的に生徒数が減るということになっていましたが、退学者もほとんど出なくなり、ひいては「学ぶ意欲の高い」生徒さんの質的向上につながりました。

学校のこの変化はどこから来たのかと考えると、それは「先生たちの気持ち」にありました。
校長の役目は現場の先生たちが気持ちよく仕事ができる環境を作ることですから、早朝に来て掃除をしたり美味しいコーヒーを淹れておいてあげること、それも自分がそれを楽しんでやること。校長である自分が楽しいから先生も気持ちよく楽しく仕事ができ、先生が楽しんで仕事をすれば生徒さんも明るく前向きに学ぶことができる。いつしかこの好循環が学校に生まれていたと渋谷講師は言います。

本を忘れず心磨きの実践を続ける

ここ数年で良くなってきた学校、先生、生徒さんですが、渋谷講師はこれからが大事だと考え、先生たちにも伝えています。定員オーバーが続くと「入りにくい」学校だと捉えられてしまい、そうなると途端に生徒数は逆戻りしてしまいます。そうならないためには、応募してくる学校へのフォローや生徒さんの質をさらに向上できるようにしていかなければなりません。
そのためには全員が「本を忘れず」にこれからも丁寧な仕事を心がけ、全員が心を合わせていくことが大事だと渋谷講師は言います。 それは、渋谷講師自身が単会の会長の時に「やっているつもり」になっていた、つまり心の伴わない実践を繰り返すことで何も変えられなかったという苦い経験をしたからこそなのです。

また、学校運営の中枢は校長の渋谷講師の他に、副校長と現場の授業の割り振りを取り仕切る教務主任の3人です。以前はこの3人がかみ合っていなかったことで、全体にまとまりができてきませんでした。
今はこの3人が意思疎通が図られ、校長が居ないところでも校長の意図を汲み取ってキチンと伝えることができるようになってきたということです。こうなれば、渋谷講師も安心して仕事を任せることができ、校長としての仕事がさらにできるようになるということでした。上がまとまることで現場の先生もまとまっていくことができるということでした。

今では何があってもその人のことを「信じきる」ようにしていると渋谷講師は言います。「大丈夫だろうか」と考えることが心を曇らすことであり「憂える」ことだからです。
もし、倫理に出会っていなかったら、さらに会長という役目をしなかったら現在の自分はいない。会長にならなかったら、倫理を学んでいても「モーニングセミナーに来ているだけ」「栞を読んでいるだけ」で実践とは何かもわからず、「実践しているつもり」になり、結局何も変わらずにいただろうと渋谷講師は言います。
目の前に現れる事象に対して、自分に矢印を向けて「自分のどこに原因があるのか」を問い、自分の「心の歪み」に気づいて矯正することが実践であり、それこそが「心磨きの実践」なのだということでした。


[講師プロフィール]

杉並区西倫理法人会 監査
野田鎌田学園杉並高等専修学校 校長
渋谷 通江

1955年   群馬県生まれ
1978年   日本大学法学部卒業
1981年4月  東京航空専門学校 教員
1995年 6月 同校 副校長
1999年4月  東京航空専門学校(現在 野田鎌田学園杉並高等専修学校)校長就任
2006年1月 杉並区西倫理法人会 入会
幹事、事務長、専任幹事、副会長 拝命
2014年9月 杉並区西倫理法人会 第10代会長拝命
2017年9月 同会 監査