時代の変化とともに

磯田サヨ講師は新潟県長岡市で美容室を他店舗で展開されています。長岡市の人口は27万人、その中で美容室は800軒もあります。主な利用が女性であることを考えると人口の半分の13万人に対して800軒ですから、かなり競争が激しいことがわかります。

過去は女性の「パーマ」が中心でしたが、現在パーマをかける方は少なく、今はカラー、カット、トリートメントが中心です。つまり過去は待っていればお客様がパーマを求めてやってきてくれましたが、その時代は終わったということです。ですから、磯田講師のところでは20年前から結婚式場といった外部から仕事を頂くこともしてきました。

しかし、その結婚式も時代とともに変化をしており、そもそも結婚式の数が少なくなってきているそうです。結婚する数が減った、あるいは式を挙げずに写真だけという方もいる。時代とともに変化していく様を見て、これが倫理の「七つの原理」の「易不易の原理」なんだと磯田講師は受け止めているということでした。だからこそ、様々なところと仕事をしていて、写真屋さんや葬儀、七五三や成人式などあらゆるイベントでの着物の着付けからヘアメイクまで幅広く手がけています。

磯田講師ご自身は息子さんに事業承継され、現在は会長として後ろから支える役になっています。

第一線で働く中で

磯田講師は「万人幸福の栞」を「人生の取扱説明書」だと言います。自分の人生を幸せにする取扱説明書であり、幸せになるためにはどのように生きたら良いのかが書かれていると言います。だからこそ、「万人幸福の栞」を身近なところに置いて、何かあった時にすぐに開いてみることを勧められました。困難に当たった時、その解決策が必ずどこかに書かれているからだということです。

自分が倫理の法則から外れたことをした時には必ず「赤信号」がやってきます。その時に、運が悪いなどと「人のせい」にするのではなく、なぜこのような問題が起こったのかを栞に照らして考えてみる。原因を他の人の中に探すのではなく、自分の中に探す、栞に書かれているような姿になっていないかを見つめ直すわけです。

女性が社会に出て働く時代、磯田講師も美容業という職を身につけ働いてきましたから、倫理を学ぶ前は結婚していても「一人でやっていける」と考えた頃もありました。特にご主人が公務員で労働基準監督署に勤めていたこともあって、美容室をされている磯田講師に事細かく言っていました。経営者としてはかなり厳しいことではありましたが、違反をすれば即座に調査に入るということを聞いていたので、違反はできないと固く守っていました。でも、そのお陰で残業もなく、有給も必ず消化できるという「働き方」ができる会社になりました。

また、磯田講師が第一線で忙しく働いていた頃、忙しい時に限って子供達が手のかかることをしてしまう、ということがよくありました。「なんで」と思っていましたが、倫理を学ぶことで自分がご主人がいながらも「一人でやっていける」と考え、知らぬ間にご主人よりも前に出るような「筋違い」な考えで生きていることに気づきました。子供達の問題は自分のそういった「ゆがみ」を気づかせてくれていた、倫理を学ぶまではそういったことを感じ取る「感性」が心に育ってなかったと磯田講師は言います。

価値観の変化

昭和21年の生まれの磯田講師は日本の高度成長、好景気に沸いた頃に中心となって働いてきた世代。当時は仕事の質よりも効率に重きをおく時代、頂き物の包装をどのように開けるか、という問題が実際に入社試験に出されたそうで、当時の模範解答は「包装紙を破いても良いから少しでも早く開ける」。包装紙を丁寧に開けるよりも、一刻も早く「作業」を終わらせる方が優先された。時代によって物の価値観が大きく変わるということがよくわかる話でした。

磯田講師は最近も同じような経験をしました。退職希望の社員さんから相談を受け、慰留のための話し合いをしたところ、「もう少し頑張ります」という返事をもらったのですが、それが話し合いの後日にメールで送られてきました。

美容室にとって社員さんは正に「財産」だと磯田講師は言います。一人前に育てるのに大変な時間と労力と費用がかかるわけですから、かけた時間が長ければその損失は計り知れません。だから辞めたいと言ってきたら必死に説得し、そこで思いとどまってくれたのなら嬉しい。けれども、その返事がメールで短く「もう少し頑張りますので、よろしくお願いします」などと送られてきたので、その価値観のギャップに磯田講師は驚かされました。

でも、そのことに対して「こういう大事なことは口頭で伝えようね」と注意しましたが、しばらくしてからのことでした。これも時代の変化なのだと磯田講師は受け止め、自分の価値基準で判断するのではなく、相手のことを考えてしばらくして落ち着いてから話をしたということでした。

最近は美容師でも「髪をいじるのは好きだけど、お客様と話をするのが苦手」という人が増えていると言います。会話が苦手、人と人との繋がりが希薄になりつつある今、倫理の教えがますます重要だと磯田講師は言います。

栞を読んで歪みに気づく

そんな磯田講師も、過去に倫理の教えに反した行動から大きな失敗をしたことがあります。

それは、夫から反対されていたにも関わらず、息子さんに任せるために新規出店をしたことでした。出店して間も無く、息子さんのやり方についていけないということで美容師さんが立て続けに5人も辞めていきました。それに伴って売り上げも急激に下がっていきました。色々と手を尽くしましたが売り上げの減少を止めることはできませんでした。原因を息子さんが急にやり方を変えたことにあるとして、息子さんを責めたこともありました。

悩んだ磯田講師は「万人幸福の栞」を読み返しました。そこで目に飛び込んできたのは第5条「夫婦対鏡」にあった一文でした。

「それがこれまでは、仕事の方ならば夫のせいにし、又子供のことなどは妻の責任にした。これが実は大まちがいである。すべてが、夫婦の心の一致しているかいないか、にかかっているのである」

何か新しい物事を生成発展(うみいだし)させる上での原則として夫婦のありようを説いたこの一文を改めて読んだ磯田講師は、そこではじめて新規出店の際に夫の反対を押し切った自分に原因があることに気がつきました。

磯田講師はすぐに反対を押し切った自分に原因があったとご主人に謝罪しました。すると不思議なことに、何をやっても止まらなかった売り上げの減少がピタッと止まりました。

ただ、一旦下がった売り上げを回復させることは中々できませんでした。そこで、お店で働いていた美容師さんが結婚をして独立したいということもあったので、そのお店を譲渡することにしました。これも、回復が難しい中でやはり栞の第12条「捨我得全」を読み、手放すことしました。現在もそのお店はその新しいオーナーが頑張っているということでした。

これらのことから、「万人幸福の栞」を身近なところにおいて、普段から活用することが大事だということでした。

その時、その場

世の中は何事も上手くいくようにできている、けれども条件があり、その条件を満たしていれば上手くいくようになっていると磯田講師は言います。その条件とはこの「万人幸福の栞」に書かれている純粋倫理に沿った生き方です。そのことが書かれた一文が第17条「人生神劇」にあります。

「その大演劇の主役は、己自身である。家にあっては父、会社に出ては社員、そして旅行もあり、選挙もある。その時、いかに、真理(神)の筋書い合するように演出しているか」

さらに、「死は生なり」の中にも「~力一ぱい生きぬいて、豊かに、朗らかに、その時その場の「全」に生き~」と書かれています。人は誰でも家族や職場、社会において色々な立場や役目があり、人生のあらゆるシーンでその役目に応じた振る舞い、生き方が求められており、それを間違えると上手くいかなくなるということです。

例えば家族と食事をしている時は仕事のことや職場からは離れて、家族団欒をしっかり楽しむこと。父や母、子供として楽しく過ごすことであり、そこに職場での立場を持ち込み、振る舞うとおかしなことになる。「その時、その場」を立場や役割に沿ってしっかりと生きることが大切だと磯田講師は言います。

また、「道義の革新」の一文ではこう書かれています。

「例えば、心配しながら、結果を予想しながら、事に当たるといったようなことである。こうした心情は、これまで別に不道徳というわけではなかった。しかし、こんな心持ちでした事は、必ず結果がよくない。ただ喜んで全力をつくす。その時は予想もせぬよい結果が生まれる、幸福になる。

こうした心の持ち方と、物事の成るか成らぬかが、重大な関係をもっている~」

つまり、「その時、その場」をしっかり生きることと同時に、その時の「心の持ち方」で上手くいくかが決まるということであり、「その時、その場を楽しむ」ことだと磯田講師は教えてくれました。

心の持ち方

この「心の持ち方」というのは日本のお祭りにも見られる「予祝」という、結果を心配するのではなく先に祝う、喜ぶという行為にあると磯田講師は言います。例えば子供の受験に際して、合格してからお祝いするのは当然ですが、試験の当日に「良かったね、今日まで頑張ってきたから必ずできるよ」と言って喜んで送り出してあげる。磯田講師はお孫さんの高校受験の時、試験当日に赤飯を炊いてお祝いしたそうで、結果見事に合格されました。

同様に、職場においても経営者はこの「予祝」で社員さんを「その気」にさせること、社員さんの「心の持ち方」を変えてあげることが大切だということです。

最後に磯田講師は、「万人幸福の栞」を人生の解説書として普段の生活で活かすこと、でもだからと言って気を張り詰めるのではなく「空所」、つまり趣味など気を抜けるところも必要だということを教えてくれました。

また、人は産んでくれた両親をはじめ、学校の先生など多くの方との縁の中で生きていますから、その縁とそれぞれの恩に感謝しなければいけません。「縁を生かす」というのは、縁に気づき感謝することだと磯田講師は言います。倫理はこのことを教えてくれていますし、普段の生活の中でそのことに気づくためにも身近に「万人幸福の栞」を置いて活用することが大事だということでした。


[講師プロフィール]

1970年 長岡市でサヨ美容室を開業
1979年 有限会社サヨ美容室に法人化する
1995年 職業訓練校を有志で設立
1995年 現在、長岡市内で5店
1995年 【豊町店、駅前店、ウェーブハウスサヨ、十日町店、ミニョンサヨ・1995年 ココロ店】 グループ店-シエスタサヨ
【倫理法人会 略歴】
1984年11月、新潟県長岡市倫理法人会入会。 長岡市倫理法人会会長、新潟県倫理法人会副会長、女性委員長を歴任し、2005年より長岡市倫理法人会相談役を務める。
2002年、法人レクチャラー、2007年、倫理経営インストラクター、法人スーパーバイザー、2017年9月より参事、法人アドバイザーに就任。