おばあちゃんの寝物語

本日の講師は埼玉県で創業120年、老舗の川魚専門の卸問屋「鯉平」の代表であり、法人スーパーバイザーの清水良晴さんです。
現在は鰻が売上の9割を占めるそうですが、その一番の商品が絶滅危惧種だということで、危機感一杯で働いています、と笑顔で話されていましたが、この時期になると毎年鰻の話題が出るだけに大変な中で経営されていることがわかります。

先代のご両親はちょうど昭和40年から50年代、高度成長期の頃で本当に忙しく、朝から晩まで働いていました。特に夏場は忙しかったので、幼少の清水さんは浦和のお母様のご実家に預けられ、おばあさんに世話をしてもらっていたそうです。清水さんはその「浦和のおばあちゃん」が大好きで、少しも寂しくはなかったそうです。
その時、毎晩「寝物語」として色々な話を聞かせてもらった清水さんは、イソップ物語やグリム童話、日本の昔話などたくさん話してもらった中でも特に印象に残っているものがありました。
それは「日本の神話」でした。子どもへのお話なので正確なものではなかったかもしれませんが、それでも他の子供向けの童話とは違う、独特の世界観に清水さんは魅了されました。

「昔々そのまた昔の大昔、雲の上に高天原という国がありました。そこには神様が住んでいます…。」

清水さんのおばあさんが話してくれたのは「古事記」でした。
このおばあさんが話してくれた古事記の中の神話は、他の童謡にある教訓とは異なり、「どう生きるか」といった生き方の示唆に富んでいました。「清き、明けき、直き心」という一貫したテーマが古事記の中の神話に盛り込まれています。日本人がどう生きるかということが古事記の中にたくさん書かれているわけです。
丸山敏雄先生は元々教職に就いておられ、日本古代史の研究者であり、「日本書紀」「古事記」については大家とされていました。特に古代史の中の「神祇史(しんぎし)」というこの「高天原の神」(伊邪那岐命と伊邪那美命、そこから生まれた天照大神、月読尊、素盞嗚命)と祇の神(地の神)についての論文を発表されています。

語り継ぐべき日本人の生き方

昭和20年9月3日に丸山敏雄先生は戦後直ぐの荒廃混乱した上野駅前で「人間は馬鹿である」という幟を立てて演説をしました。
「皆さんは横に歩くカニを見て笑いますが、今の皆さんは笑えません。なぜなら今の皆さんは後ろ向きに歩いているからです。今こそ日本民族の誇りを持って道義再建のために立ち上がろう。そのために生活改善運動をしよう。日々の生活の中から自分を変えていこう。そして日本をよくしよう。」と呼びかけました。その日帰宅した後に「夫婦道」を起稿されました。

なぜ、この戦後の大変な時に「夫婦」が大事なのか、疑問に思われるところですが、そこに古くから日本人が大切にしてきた「国生み神話」にありました。古事記に記されたイザナキとイザナミの合一によって日本が生み出されたという神話、つまり今から荒廃した日本を新しく「国生み」する上で根本になるのは夫婦の愛和であるということを訴えられたわけです。
(丸山敏秋著「七つの原理」第5章にて説明されています)

このように、日本人の「生き方」やそのための「考え方」が神話の中に記されているのわけですが、さらに「働く」ことについても示唆した話があります。それは、月読尊が天照大神の命を受けて地の神を見に行ったところ、誤って饗してくれたウケモチ(保食神:食の神)を殺してしまうが、その死体から繭玉や稲が生じて天照大神によって日本人に養蚕と稲作が与えられた、というもの。神話なので当然事実とは異なりますが、この話の中で示唆されているのは神によって生活の糧の元となるもの、養蚕や稲作と行った「働く」機会を神から与えられた、喜ばしいことであり感謝すべきことだと記されている点が大事だと清水さんは言います。
一方で欧米における働くことに対しての考え方にはどこか「労苦」がつきまとっていたことから「労働」という言葉で表され、ここに古来の日本人にある価値観を反映したものが丸山敏雄先生が述べられている「喜働」であると言うことでした。

今回は清水良晴さんから、生き方や考え方の示唆に富む古事記の中にある神話から丸山敏雄先生が戦後荒んだ日本の国民に向けて示された「純粋倫理」という生き方を確認するものでした。
ありがとうございました。