今回は株式会社エクストの高畑欽哉社長に「世界に広がる破壊的イノベーション」をテーマにお話を伺いました。

2つのイノベーション

冒頭に近年とてつもないスピードで成長する「スタートアップ企業」についての説明を聴きました。ベンチャーキャピタルから出資を受けて急激な成長カーブを描くというのがその特徴で、代表的なものがフェイスブック、ウーバー、アマゾン、テスラといった企業です。日本でもメルカリ、ラインといったところがあげられます。

こういった企業は、赤字を出しても年々売上を倍増、急成長を糧に赤字を吸収しながら、時価総額を上げて経営をしていきます。このような「スタートアップ企業」というのが従来の中小企業と肩を並べて戦っているというのが現在の市場環境です。
ここで高畑さんはピーター・ドラッカーの言葉から企業の目的の普遍性を説明されました。

「企業の目的は顧客の創造である。
したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。
マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。」

続けて、イノベーションについて説明されました。

「新しい価値を創造し顧客または社会に提供すること」

より簡単に言い換えると、「昨日まで叶えられなかったニーズに、今日お応えすること」がイノベーション。例えばお客様が何かでお困りであるけれども誰も解決できないという時に、これを創意工夫で解決をした、というのがイノベーションだということでした。

このイノベーションには2種類あり、その一つを「持続的イノベーション」と言います。これは例えば自動車でいうと、居住スペースが広くなる、エアコンがつく、エンジンが変わるなど、少しずつ何かしら新しい機能が増えていって今に至っています。この「持続的イノベーション」は日本企業が得意とするものであり、それを代表する言葉が「カイゼン」です。つまり、日々新しい改善を加えることによって、数年先にまったく新しい価値を創造することを「持続的イノベーション」と言います。

もう一つは「破壊的イノベーション」と言われるもので、今まで積み上げてきたものを一瞬にしてゼロにしてしまうほどインパクトを持ったものです。同じ自動車で見てみると「自動運転」や「ライドシェアサービス」と言われるものがそれにあたります。そしてこの「破壊的イノベーション」が世界中で起こっているわけです。

これまでに起こってきたイノベーション、例えばインターネットなどは中小企業自身が利用者として活用することによって大企業にしかできなかったことができるようになるなど、中小企業にとってはチャンスでした。ところが、現在起こっている「破壊的イノベーション」とは、中小企業が育ててきた市場を土足で踏みにじって壊していくというものです。

破壊的イノベーションの代表格

その代表的なものを紹介してもらいました。
1つ目は「シェアリングエコノミー」と言われるもので、その代表的なものが「ウーバー」です。
特徴としては、一般的なタクシーの配車に加え、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ仕組みを構築している点で、顧客が運転手を評価すると同時に、運転手も顧客を評価する「相互評価」を実施。アプリで目的地を設定すると、ドライバー確定後に「ドライバー名」「顔写真」「評価」「車両ナンバー」が通知されます。特にこれまでの乗客からの評価がチェックできるという点が特徴的です。さらに、到着時間やドライバーの現在地がアプリで確認できるという点も大きな強みです。事前にクレジットカードを登録しておけば、支払いはカードから自動で引き落とされ、また料金履歴も残るため、酔っ払って帰ってきた場合なども後からきちんと確認できます。ドライバー情報がアプリに残るため、車内に忘れ物をした際などもドライバーと直接連絡がとれます。また通常より高額な乗車料金を請求されたり、盗難被害に遭ったなどのトラブルが発生した際も大丈夫です。アプリの運営会社に報告することで、速やかにドライバーへ連絡が届いて適切な対応がとられます。乗車後もドライバーにしっかり連絡がつくぶん、一般のタクシー利用よりも安全と言えます。

ITの発達によって同様のシェアリングサービスが広がっています。人材やオフィス、自家用車など使われていない時間をITを使って簡単にシェアして利用するというサービスで、これまでの既存のサービスを破壊していこうとしています。

2つ目は「自動運転」です。まだまだ自動運転には懐疑的な見方もありますが、高畑さんは自動運転の普及が確実だと断言されました。その根拠として上げられたのが自動車メーカーであるボルボが先程のウーバーに対して、2019年から2022年の間に完全自動運転車を2万4千台供給するとした契約です。つまりボルボはこれまで積み上げられてきた自動車業界は自動運転によって完全に破壊されたので、それを供給する側になる判断をしたということです。自動運転が普及するとその所有者はわからなくなります。つまり「ライドシェア」によって個人所有が少なくなる上に自動運転が加わるとより公共サービスに近づいていく、あるいはウーバーのような企業がサービスを提供することが予想されるからです。

また、自動運転の普及が確実だという根拠はこれだけではなく、グーグルが行っている実験による事故のデータ、その大半が人間が運転する車による「もらい事故」であるという結果からも言えるわけです。
この「自動運転」によって破壊されるのは自動車業界だけではありません。ウーバーの出現によってイエローキャブというアメリカを代表するタクシー会社がすでに倒産しています。さらに、自動運転によって人の運転のリスクが高くなれば保険の額も高くならざるを得なくなり、ますます人が運転することはなくなり、自動車保険もなくなります。

人智を超えて

3つ目は「AI」です。人間のトップ棋士を破った「アルファ碁」は有名ですが、実はその「アルファ碁」を遥かに凌ぐ知能を持った「アルファ碁ゼロ」というAIが存在します。「アルファ碁」は過去の対戦を学習させた上で「アルファ碁」同士で4000万回もの対戦をさせてその知能を高めさせ、遂に人間を破りました。「アルファ碁ゼロ」はルールだけを教えて「アルファ碁ゼロ」同士で500万回対戦させたものですが、これを「アルファ碁」と対戦させたところ100戦100勝だったのです。つまり人間を破った以上の、それを遥かに上回る知能を持ったAIが存在しているのです。

この「アルファ碁」を生んだのは、グーグルが数百億円で買収をしたディープマインドという会社です。グーグルは自社のデータセンターにある数千万台のコンピュータを冷却させるための空調の管理にこのAIを投入しました。すると、これまで数多くの研究者がなし得なかったこの電力の効率化を一瞬にして可能にし、消費電力の40%ダウン、15%の電気代削減を実現させました。この技術を世界で起こっているエネルギー問題に活用したらどうなるのか、大きな期待が寄せられています。

しかし、一方でこのAIがあらゆる業種を効率化して10年〜20年後には今ある仕事の47%が無くなると言われています。これは今に始まったことではなく、コンピュータが出始めた頃に無くなった仕事の代表的なものに「電話の交換手」があります。当時アメリカに電話の交換手が20万人もいましたが、コンピュータで代用されることになってその人たちは別の仕事に移っていきました。このことから色々なことが予測されています。洗濯物を畳むのは機械の仕事になり、ヒットソングの作曲や有名雑誌の記事もAIが書きます。2050年ごろには人がやることの大半をAIがやれるようになると予想されています。

そしてすでに現在でも多くのところでAIが活用され、着実に効率化が進んでいます。銀行のコールセンターでの、顧客からの問い合わせを瞬時に読み取って過去のデータから適切な回答を画面に映し出す。あるいは読み上げる機能も現在はほぼ違和感なくスムーズにAIがこなすことが可能になっており、もはや人に取って代わっています。
これらのことから、AIやITというのは我々の身の回りの非効率なところにドンドン入ってくることは間違いありません。そうなった時に私たちは、AIやITを「利用する側」になるのか、それとも「利用されるあるいは吸収される側」になるのか、必ずいずれかになります。ですから、少なくともこれからの中小企業は「我々はIT企業だ」という認識を持って取り組んでいかなければいけません。

「ちょっとITは苦手で」などと言って敬遠していると経営できなく時代がすでに来ていると高畑さんは警告されました。その上で、これからは今までの延長線上の発想はやめて、自ら変化の先頭に立つという気概が求められるということでした。

イノベーションの5つのタイプ

イノベーションを起こす企業には共通項があると高畑さんは言います。
「メルカリ」はフリーマーケットとアプリを組み合わせました。「ウーバー」はタクシーと自家用車をスマートフォンで結びつけました。「エアービーアンドビー」は旅行者と空き家を結びつけました。最近出てきているこれらの新しい事業も、このように見ていくとそれほど奇抜なものではなく、これまであったものを結びつけただけに過ぎないことがわかります。つまり「異種なるものの新しい結合」がイノベーションのポイント、今ままで組み合わされていなかったものを新しく組み合わせることがイノベーションのコツになります。
イノベーションはオーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが唱えたもので、5つのタイプがあります。

新しい財貨すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産 – プロダクション・イノベーション
新しい生産方法の導入 – プロセス・イノベーション
新しい販路の開拓 – マーケット・イノベーション
原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得 – サプライチェーン・イノベーション
新しい組織の実現 – オルガニゼーション・イノベーション

このうちのいくつかを紹介してもらいました。
その一つがスマートフォンです。当時出回っていた携帯電話とコンピュータを結びつけました。そして、スマートフォンの登場で多くのモノや環境を一変させました。デジタルカメラの販売台数は大幅に減少し、タイマーも不要になりました。

「バーミュキュラ」という炊飯器もその一つ。これを作ったのは当時倒産寸前だったクレーン車の油圧部品の製造会社。この時に流行っていた「ル・クルーゼ」というホーロー鍋を見た後継者が「これだったら自社でもつくれるのでは」と考えて高性能の鍋を作ったところ大ヒット。そこでその技術を応用して作ったのがこの炊飯器です。このように、今まであった技術を別の分野で応用することもイノベーションと言われます。

エアービーアンドビーの創業者の二人はサンフランシスコでルームシェアで住んでいました。ある時サンフランシスコを大きなイベントが開催されることになり、大勢の人が来たことで近隣のホテルが満室になって行きたくても行けない、という人がいることがわかった。そこで二人は空いている部屋で良かったら使っても良いとネットで投げかけたところ応募が殺到。これはビジネスになると考えて始められたのが民泊事業です。これは「空き家」と「旅行者」という新しい販売先を開拓したというイノベーション。

ウィーワークは今年の2月に日本に進出。この会社はオフィスのスペース貸しをしています。これは単に空いている場所を提供するというだけではなく、他の会社の人たちと交流することで新しい情報を得て自社に活かすというのが目的。つまり費用よりも自社内に新しいコミュニティを作り、そこから新しい価値を得ようというものです。これまでは自分たちの技術や情報を隠してそれを強みにしてきましたが、これからの時代はスピードが早すぎて追いつかなくなってきた。そこで、どんどんオープンにして、その分自分たちも吸収しようという動きが加速しています。この流れに乗ってオフィスのスペース貸しをする会社が現れ、とてつもない時価総額を上げて日本にも進出してきたというわけです。

マインドイノベーション

最後に高畑さんはイノベーションについて「何もないところから、誰も思いつかないものをつくることではない」と教えてくれました。今ある自分たちのビジネス、強みを一旦解体して、なにか新しいものを付け加えることで付加価値を生み出していくことがイノベーションだということでした。大事なことは、それをやり続けること。そうするためには「自分たちにはできる」というマインドを持つことが重要だと高畑さんは言います。

100年以上前の新聞に書かれた「未来予想図」に現在使われている技術や製品があります。この新聞記事を紹介しながら、日本は元々想像力豊かで日々の努力の積み重ねによって色々なイノベーションを起こしてきている、世界トップクラスのイノベーターだったと高畑さんは言います。それなのに、不景気になって以来多くの日本人が自信を失ってしまい、イノベーションを起こす気力とエネルギーを失っている。

そんな日本のイノベーターの一つがヤマハだと高畑さんは言います。音楽機材からバイクまでこれまで様々な分野で一流の製品を世に送り出してきたヤマハですが、やはりここ最近は低迷をしていました。そんな中で新しく入社した新人社員が「このままではヤマハは無くなる」と声をあげたところ、社長からシリコンバレー行きを命じられ、単身海を渡り今起こっているイノベーションの数々を吸収しに行きました。その社員が帰国後に世に送り出したのが「バイクを運転するロボット」でした。言わば自走するバイクですが、当然これまでどのバイクメーカーも作ったところはありません。これがそのまま商品化され売れるのかどうかはわかりませんが、このこのチャレンジするマインドと行動力こそが今の日本に求められていると高畑さんは言います。

高畑さんの会社でもこれまで数多くの製品を生み出しては消え、また生み出すという、チャレンジを繰り返してきました。創業から数えると20番目の製品が今ようやくヒットしているそうです。「SONR.」という社内コミュニケーションツールは、まさに社内のイノベーションを促進させるためのツールとして生み出されました。興味のある方は是非ご確認ください。
SONR. 社内コミュニケーション・タスク管理ツール
http://www.sonr.jp/

高畑欽哉講師、本当に「今」を知る貴重な講話でした。
ありがとうございました。