本日の講師は株式会社ロゴ 代表取締役の津曲公二さんです。
津曲公二さんは26年間日産自動車に勤め、技術部門を皮切りに設備投資や原価管理、新製品開発まで幅広く、ものづくりの現場のマネジメントを手がけられました。日産を退職後に教育研修会社に勤務の後に独立、現在の株式会社ロゴを設立し、プロジェクトマネジメントについて海外にも広く教えていらっしゃいます。

お仕事柄、今回の講話をお願いしてから今日に至るまでの準備について1ヶ月以上前から担当役員と「すり合わせ」を行ってきました。倫理法人会の会員ではないため、モーニングセミナーに参加されたことがなかったので事前に一度参加して雰囲気をつかみ、さらにその時に教えてもらった後継者倫理塾の行事にも参加して、倫理法人会での学びの一端をご自分の目と耳で確かめられた上で今日の講話に臨まれました。

先ず信用信頼

津曲さんは最初に日本が国としてとても安定しているということについて説明をされました。一つには公共サービスの充実が上げられ、中でも最も高度なものとして上げられるのが「国民皆保険制度」です。さらに身近なサービスとしては、呼べばいつでも来てくれる救急車の存在。また、災害時にはすぐに情報が流れ、復旧工事もすぐに行われます。
日本におけるこれらの制度やサービスに問題が無いわけではありませんが、他の国と比較した場合、特に人工が1億人を超える先進国における労働生産性についてよく比較される欧米の国々では比較にならないほど高度に安定したものです。
「効率がビジネスになると利益一辺倒になる」と津曲さんは言い、労働生産性が高いとされる欧米先進国は国民の安定した生活よりも先にビジネスがあることを指摘し、逆に日本はまず「信用信頼」が第一に求められることで高度に安定した生活を実現しています。だからこそそういった欧米先進国から出される労働生産性の指標による比較は意味が無いので鵜呑みにしてはいけないと指摘されます。

世界に類を見ない「カイゼン」

また、津曲さんは海外での講演やコンサルティングも行っていますが、特に欧米先進国と複雑な関係にあるロシアにとって日本は身近にいる経済大国として歓迎され、何度もセミナーをしているとのことで、セミナーを開催するといつも満席という人気ぶりだそうです。
そこでは、日本におけるモノづくりについて講義がされ、特に日本の「カイゼン」活動について真剣に学んでいます。そこでも驚かれるのは欧米諸国が「契約社会」であることに対して日本が「信用信頼」を第一にした社会であるということです。あるセミナーでも日本は「終身雇用」が基本であるからロシアとは働く環境が違うので参考にならないのでは、という質問が出たそうです。日本では終身雇用契約を結ぶのが決まっているという上での質問だったわけですが、当然日本での終身雇用の契約を結ぶことはなく、労使間の「信用信頼」が形となって現れたものの一つです。さらに、日本では普通に入社した人が実力を認められて社長にまで上り詰めるということはありますが、それもロシアでは考えられないということでした。これも経営における透明性や「風通しの良さ」、公明正大な経営を良しとする日本特有のものだと津曲さんは言います。だからこそ、情報や目標を会社全体で共有し、部署や職種を越えての「カイゼン」活動が行われます。

自主自立を促進する「5S」

また、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」は日本の宝だと津曲さんは言い、ロシアでも多くのところで取り入れられているそうです。労使間が契約だけで成立している国では何事も経営者が考えて指示を出し、社員は指示されたことだけをやるというのが普通で、だからこそ社員が自主的に行う「カイゼン」活動は不思議でならない。実はこの社員の自主性を養っているのが職場の「5S」活動だということです。「整理・整頓・清掃」はやるべきこと、「清潔」は状態を示し、「躾」は人財育成。つまり「5S」というのは職場の規律だと津曲さんは言い、規律がある組織でなければ自主的な活動はあり得ないと言います。
津曲さんはロシアでこの「5S」を取り入れている企業を見ることで、この「5S」の自主自立性を促進させる効果がよくわかったそうです。ロシアのたいていの企業はこれまで通り、どちらかといえば労使が敵対関係というまでではないにしても階層的な関係にあり、命令する側と実行する側が明らかですが、日本式に「5S」を取り入れているところは風通しがよく、目標も共有されているので互いに考えていることがよくわかり、それぞれが自主的に仕事に取り組む姿勢であったからです。

日本の現場を守ったゴーン社長

津曲さんが勤めていた日産では、1999年に提携していたルノーから当時上級副社長の立場にいたカルロス・ゴーンさんを社長として招聘し、「コストカッター」との異名を持つゴーンさんの手腕に注目が集まりました。
津曲さんが言うには、「コストカッター」というのはフランスにいた頃につけられたもので、欧米の契約社会、階級社会、敵対的労使関係においては当然のことでした。日本で欧米流の経営がそのまま通用するとはゴーンさんも思っていませんでしたから、実際日本では一人の社員も辞めさせることはしませんでした。
系列会社の株を売却することで資金調達し、社員を辞めさせるどころか所属の社会人野球チームまでも存続させました。それは、欧州のサッカークラブと同様に日本人の野球と自社チームへの愛情の深さを知ったからです。それほどゴーンさんは日本の現場をつぶさに観察し理解したわけです。日本の現場の自主自立性の高さを知ったゴーンさんは現場の意見をドンドン取り入れ、さらに優秀な人材を現場からドンドン引き上げることで、日産の業績を回復させていきました。

津曲さんは、欧米の一方的な指標による比較に惑わされて利益や効率一辺倒になるのではなく、日本独自の「信用信頼」に重きを置いた経営を大切にしなければいけないと教えて頂きました。そしてそれは「倫理経営」と合致しており、我々法人会の会員が純粋倫理を学び、それに基づいた経営をこれからも行い、広めていくことを評価してくださいました。

津曲公二講師、ありがとうございました。